"House of Guinness"のサウンドトラック/アイルランド音楽の近況

"House of Guinness"のサウンドトラック/アイルランド音楽の近況

Netflixで「House of Guinness」というドラマを観た。
19世紀、あのギネスビールのギネス社の4人の兄妹を主人公にした、愛と憎しみ、信頼と裏切り、不倫と男色、フィニアンとユニオニスト、富と貧困、ジャガイモ飢饉とアメリカ移民、とにかくアイルランドのありとあらゆるスキャンダルを詰め込んだようなソープドラマである。とても面白かった。特にアイルランドに興味が無い人が観ても十分に面白いと思う。
面白さのツボ、背景などはこちらに詳しく解説がある。

僕が感心したのは使われている音楽だ。最新のアイルランドの音楽、それもけっこう際どい選曲がされている。検索したら使われているトラックの一覧があった。すでに知っているバンドも多いが、知らないバンドもある。これはある意味、最新のアイルランド音楽のイケてるトラックリストであるとも言えるだろう。一通り、調べてみようと思う。

こちらがそのトラックリスト。

一つづつ紹介していく。

◼️Starburster – Fontaines D.C.

このバンドは今アイルランドで最も人気のあるバンドだろう。グラストンベリーなどにも出ていたし、来日もしている。2017年結成の若いバンドだが、ウィキを見たらこんな説明があった。「5人は詩に対する愛を通じて仲を深め、共同で『Vroom』(ビート・ジェネレーションの詩人であるジャック・ケルアックやアレン・ギンズバーグに影響を受けたもの)と『Winding』(パトリック・カヴァナ、ジェイムズ・ジョイス、ウィリアム・バトラー・イェイツといったアイルランドの詩から着想を得たもの)の2作の詩集を出版。」ああ、文学青年ではないか。

◼️Get Your Brits Out – Kneecap

いわずとしれたKneecap。日本でも自伝映画が公開された。

1月には来日するし、なんなら観に行く予定。こちらも観てください。

◼️ Devil’s Dance Floor – Flogging Mary

1997年結成のアメリカのアイリッシュパンクバンドである。もうベテランである。

◼️Hood – Kneecap

◼️Cruel Katie – Lankum

アイリッシュトラッドに新風を送り込み、2019年と2024年にアイリッシュアルバムオブザイヤーを受賞したもはや大御所である。僕は勝手に「暗黒トラッド」と呼んでいる。

◼️ In ár gCroíthe go deo – Fontaines D.C.

下は曲が違うが、あまりにもかっこいいので載せた。タイニーデスクのファウンテンズDC。観てほしい。

◼️ The Rich Man and the Poor Man – The Mary Wallopers

ああ、我らがメアリー・ウォーローパー。このドラマのために書き下ろしたのか、と疑ってしまうタイトルだ。

彼らについてはこちらも観てほしい。

◼️As I Roved Out – The Mary Wallopers

◼️ Goodnight World – Lisa O’Neill

リサ・オニールは1982年生まれのシンガーソングライター。
バリーハイズという北アイルランドとの国境近くの村で生まれ、18歳の時に音楽を学ぶためにダブリンへ、グラフトンストリートの有名なカフェ、ビューリーズで働いたりしていたという。その後も音楽活動を続け、2019年に RTÉ Radio 1 Folk Awardsで最優秀オリジナルフォークトラックを受賞したとのこと。この時38歳。苦労してきた人だ。シェイン・マクガワンの葬式でフェアリーテール・オブ・ニューヨークの女性デュエットを担当していたのが記憶に新しい。

◼️ Another Round – The Scratch

The Scratchはダブリンを拠点とするアイルランドのバンドで、アイルランドの伝統音楽とヘビーメタルを融合させた音楽を演奏しているのだそうだ。面白い。元々5人組のヘビメタバンドでそのうちの3人で結成したそうだ。

◼️ I bhFiacha Linne – Kneecap

◼️ Brother was a Runaway – Adrian Crowley

エイドリアン・クロウリーは、1968年に母親の故郷マルタのスリーマで生まれ、ゴールウェイに育ち、ダブリンに住んでいるそうだ。8枚のアルバムを出し、「誰も知らない最高のソングライター」とも言われているという。この曲はなんだかペンギンカフェオーケストラをバックにデビッド・ボウイが歌っているようだ。

◼️ Jailbreak – Thin Lizzy

言わずとしれたアイルランドが産んだハードロックバンド。選曲がウィスキー・イン・ザ・ジャーではないところがにくい。まあ、ウィスキーじゃなくてギネスだからな。

◼️ Brewing Up a Storm – The Stunning

ザ・スタニングは1987年にゴールウェイで結成されたベテランロックバンド。1994年に解散したが、その後再結成し活動を続けているという。知らなかった。

◼️ Carraig Aonair – Pebbledash

おっと、ランクムの仲間か、と思ったがどうなのか。
ペブルダッシュはアイルランド・コーク出身の5人組シューゲイザー系オルタナティブロックバンドなのだそうだが、詳細はよくわからなかった。

◼️ Choose Life – Shark School

このバンドもよくわからない。インスタの自己紹介にこうある。「すぐ近くの道から現れた、男性だけの超セクシーなダンスクルー。ウェット・レッグとニルヴァーナが子供を産み、カトリック的な罪悪感で育てたとしたら…」うーむ、確かにウェット・レッグに似ている!

◼️ Come Out Ye Black and Tans – Derek Warfield & The Young Wolfe Tones

いやあyoutubeというのはすごい、こんなのも出てくるのだから。ウルフトーンズはなんと1963年に結成されたアイルランドのフォーク・バラード・グループである。

◼️ Meth Lab Zoso Sticker – I Dreamed I Dream

むむむ、検索しても出てきませんでした。”Meth Lab Zoso Sticker”も、 “ I Dreamed I Dream”も曲名としてヒットするのだが。

◼️ The Congress Reel – Poitin

バンド名のポティーンはアイルランドで密造されていた強い酒のことである。2001年に結成されて5枚のアルバムを出しているそうだ。5人組のトラッドバンドだ。

◼️ The Granite Gaze – Lankum

◼️ Cheeky Bastard – The Scratch

◼️ Boil the Breakfast – The Chieftains

言わずとしれたチーフタンズである。

興味がある方はぜひこちらを観てください。

◼️ Lawmaker – YARD

YARDはダブリン出身の刺激的な3人組エレクトロパンクバンドだそうだ。かっこいい。

◼️ Death Kink – Fontaines D.C.

◼️ Fáilte 2025 – IMLÉ

IMLÉはダブリンを拠点とするミュージシャン兼プロデューサー、キアン・マッカーシーによって設立された。アイルランド語で演奏し、トリップホップからドリームポップ、インディーまで多様な音楽スタイルを融合させるコレクティブ、だそうである。面白い。80年代のチェリーレッドレーベルを聴いている気分になってくる。

◼️ Phil the Fluter’s Ball – Ruby Murray

ルビー・マレーは北アイルランド出身の、1950年代のイギリス、アイルランドでとても人気のあった歌手だそうだ。この曲は聞いたことがある。

◼️ Saints and Sinners – The Feelgood McLouds

こちらはドイツ出身のご機嫌なアイリッシュパンクバンド。ご機嫌=Feelgoodだな。

◼️ Old Note – Lisa O’Neill

◼️ Amphetamines – Cardinals

Cardinalsはアイルランド・コークを拠点に活動する6人組バンド。今時のロックバンドなのに、アコーディオンが居る、というのがアイルランドらしい。
Noteに記事があった。

◼️ Go Head – ROCSTRONG

コンゴ生まれのダブリン在住アーティスト、アンドレ・バンガラの一人バンドだという。ヒップホップ、ファンク、ポップの要素を融合させた音楽。シングル『Go Head』がコーエン兄弟の映画『ヘイル・シーザー!』のサウンドトラックに採用されたそうだ。このライブ動画を観るとその斬新さがよくわかる。

◼️ Its Been Ages – Kneecap

◼️ For Everything – The Murder Capital

ザ・マーダー・キャピタルは、2018年にアイルランドのダブリンで結成されたポストパンクバンド。ジョイ・ディビジョンを彷彿とさせる、なんて言ったら彼らは怒るだろうか。

◼️ The Parting Glass – Robocobra Quartet

北アイルランド・ベルファストのバンドで、6人のミュージシャンが入れ替わり立ち替わりしてライブツアー用のカルテットを形成する、という流動的なメンバー構成、そして実験精神がロボコブラ・カルテットの核だそうだ。"ストラヴィンスキーとデッド・ケネディーズに等しく影響を受けた音楽家たちの集合体"だそうだ。かっこいい。
ちょっと見つからなかったので曲は違うが、面白いのでこちら観てください。

◼️ All the Boys on the Dole – TPM

このTPMは、あのMary Walloperの前身ラップバンドだ。ヘンディ兄弟が若い!

◼️ Nausea – Gurriers

2020年結成、ダブリン出身の5人組のバンクバンド。2023年にデビューアルバムを発表したという。

このバンドもnoteに記事がある。

◼️ The Parting Glass – Boygenius & Ye Vagabonds

このThe Parting Glassは別れを歌ったスコットランド民謡だが、このバージョンはシニード・オコーナーを追悼して、チャリティシングルとして発売されたという。
Boygeniusは、アメリカのインディーロックグループ。一方のYe Vagabondsは、ダブリンを拠点とするディアムイドとブライアンのマックグロイン兄弟のデュオ。2015年から活動している。

◼️ Lawman – Gilla Band

アイルランド・ダブリン出身、4人組のポストパンク/ノイズロックバンドです。2011年に結成なので、もうベテランだ。影響を受けたミュージシャンにジェイムズ・チャンス・アンド・コントーションズを入れているところなど、ステキではないか。

◼️ Starburster – Fontaines D.C.

◼️ Beer, Beer, Beer – The Clancy Brothers

クランシーブラザーズの解説は不要だろう。
ギネスだからこの”ビール、ビール、ビール”という歌は最適だ。

ああ疲れた。しかし、有意義な作業であったと思う。

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