少し前になるが、映画ENOを観に行った。2,500円払った甲斐があった。
ピーター・バラカンが評するように「芸術的に生きるとはどういうことなのか」がよくわかる映画であった。
ジョン・ケージから着想を得た「オブリーク・ストラテジーズ」などというカードのことは初めて知った。ベルリンでのデビッド・ボウイとの「ヒーローズ」レコーディングでこのメソッドを使ったエピソードが素敵だ。いや、それよりもその時の、ヒーローズを歌うデビッド・ボウイが卒倒するほどかっこよかった。
検索したら「日本語版オブリーク・ストラテジーズ」があった。皆さんも会社の会議などで行き詰まった時、ぜひ使ったらいいと思う。
他に印象に残ったのは、フェラ・クティの音楽に衝撃を受け、ニューヨークの地下室にトーキング・ヘッズのメンバーを集めて、大音量で聞かせたという話。彼らの音楽にダイレクトに影響を与えたに違いない。それにしてもフェラの音源をかけて、「ああー、このかぶせてくるようなホーンセクションが最高だろ」とか言っているENOが微笑ましく、親近感を覚えた。
この曲じゃなかったかな
また同様にダブの巨匠リー・ペリーについて言及している箇所もあった。「もう全部トラックを抜いてしまって、もうベースだけ、ボボン、ボボーン、ってやっちゃうんだぜ、すごいだろ」などと何を言ってるかよくわからないのだが、興奮しているのは伝わってくる。
You Tubeでlee perryで検索すると一番最初に出てきたのがこの動画。今まで見た動画の中で一番解像度が低いと思う。素敵だ。
もう一点ちょっとしたことではあるが、映画に出てくる1993年のグラミー賞の授賞式、確かU2のZooropaのプロデューサーとして表彰される時、プレゼンターがなんとブライアン・フェリーだったこと。事前のお膳立てなのではないか、と思ってしまった。音楽なんか興味がなかった美学生だったブライアン・イーノが偶然誘われて入ったロキシーミュージックこそ、彼のキャリアのはじまりだったのだから。
ところで、今聞くと、Zooropa、なかなかいいぞ。
「今までは朝起きたら朝ごはんを食べて、メールとかチェックしたり、などしていた。しかし、それだと朝からいろんなものを自分の中にインプットしてしまって、精神的に満腹になってしまう。だから、今は朝ごはんも食べず、パソコンも開かずに、湧き出てくるインスピレーションを逃さないようにしているんだ」と話していた。本当に真面目な仕事人なんだな、と思った。
しかし、この映画、上映するたびに内容や使われる映像などが、ランダムに組み換えられるという趣向なんだそうだ。もしかしたら上記エピソードなどはたまたま僕の見た回だけだったのかもしれない。違う回を見た人と話がしたい。