誰もを魅了した歌声、ドロレス・ケーン

誰もを魅了した歌声、ドロレス・ケーン

セント・パトリックス・デイに、ドロレス・ケーンが亡くなったとのニュースが。僕はアイルランドの歌手のなかで、この人が一番好きだった。でもそれは僕だけではなく、世界中の人がそう思っていたようだ。彼女の死を惜しむ多くの投稿がSNSに溢れた。そのどれもが彼女の歌がいかに美しく、神聖なものであったかを熱く語っている。追悼の意味も込めて、彼女の人生をなぞってみたい。

彼女は1953年ゴールウェイ市街から北へ30kmほどにある小さな村、カハーリストレーンに生まれる。4歳から叔母のリタとサラに育てられ、叔母たちも有名なシャーン・ノス歌手だった影響で幼い頃から歌い始める。

こちらはテレビ番組だろうか、1981年にリタ、サラとともにドロレスの音楽的なルーツについてインタビューで語っている。

こちらはのちに撮影された動画だが、そのリタとサラと共に歌っている。

1975年、彼女が22歳のときに結成したばかりの伝説的なアイリッシュ・トラッド・バンド、デ・ダナンに参加する。このバンドはゴールウェイの西の街、スピダルにあったパブ、ヒューズでのセッションをきっかけに結成され、シンガーとしてドロレスがスカウトされたのだそうだ。その時のことをこのインタビューで語っている。

1975年デビューアルバム『デ・ダナン』をドーナル・ラニーのプロデュースでリリースし、シングル「ザ・ランブリング・アイリッシュマン」はアイルランドで大ヒットする。しかしドーナル・ラニーという人はこんな時期からプロデュースをやっていたのか。すごい人だ。

De Dannan - Rambling Irishman

1976年初頭、わずか2年の活動期間の後、彼女はイギリス人の音楽家ジョン・フォークナーとの結婚を機にデ・ダナンを脱退する。ドロレスの後にはアンディ・アーバインが後任となったそうだ。1978年にはソロアルバム「There Was a Maid」が発表される。その後、彼女はジョン・フォークナーと共作名義で3枚のトラッドアルバムを録音する。これらのアルバムが本当に素晴らしい。アレンジが洗練されているし、それぞれのアルバムにコンセプトがしっかりあるのはジョン・フォークナーの才能であろう。しかし、彼がドロレスの歌に惚れ込み、その魅力を最大限伝えようとして録音をしていったのだということはよくわかる。

There Was a Maid (1978)

Broken Hearted I'll Wander (1979)

Farewell to Éirinn (1980)

Sail Óg Rua (1983)

こちらは1983年のジョン・フォークナーとの共演映像。彼の歌も本当に素晴らしい。ドロレスは珍しくコンサーティーナを演奏しながら歌っている。

John Faulkner and Dolores Keane - the Bonnie Light Horseman

この後、1980年代半ばに彼女はデ・ダナンに復帰し、アルバム『Anthem』『Ballroom』の録音に参加した。そして1988年、再びソロ活動に力を注ぎ、アルバム『ドロレス・ケーン』をリリース。続けて1989年にリリースされた次作に収録された「檻の中のライオン」が初のアイリッシュ・ナンバーワン・シングルとなる。

こちらはその頃、1988年の映像。ポール・ブレイディとの共演。

Paul Brady & Dolores Keane - Paddy's Green Shamrock Shore (Live in 1988)

そしてこちらが、世界的なヒットとなった、ネルソン・マンデラのことを歌った「檻の中のライオン」。アレンジが80年代の雰囲気たっぷりである。
Lion in a Cage (Nelson Mandela) - Dolores Keane

また1992年、記録的なヒットとなった『A Woman's Heart』に参加、エレノア・マクエボイ、メアリー・ブラック、フランシス・ブラック、シャロン・シャノン、モーラ・オコンネルも参加したこのアルバムは、アイルランド史上最大の売上を記録し、1994年には第二弾も制作された。

Dolores Keane - The Island

一躍世界的なスターになったドロレスだが、その後は難しい人生であったようだ。1988年にジョン・フォークナーと離婚、うつ病やアルコール中毒、そしてがんも患い、1990年代の後半には歌手活動を休止している。そして2026年3月16日、故郷であるカハーリストレーンにある自宅で72歳で亡くなる。

こちらは亡くなった後アップされた、TG4ミュージックアワード2022で「カレドニア」を歌うドロレス。歌っている最後の映像ではないだろうか。

最後は僕が大好きな曲「クレイギーヒル」。どうか天国では安らかに、そして歌いながら暮らしてくれたら、と思う。

Dolores Keane - "Craigie Hills" (1982)

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