カナダのルシアー テッド・トンプソン

カナダのルシアー テッド・トンプソン

最近Thompson T1というギターを手にした。これまで聞いたことのないギターで、製作者のことも知らなかったので少し調べてみることにした。すると、この製作者テッド・トンプソンは奇しくも昨年の5月に亡くなっているということを知った。

アメリカには”The Acoustic Guitar Forum”というのがあり、ありとあらゆるアコギに関する情報がスレッドになっている。そこに”RIP Ted Thompson”というスレッドがあり、彼の訃報が共有されていた。そして、彼の地元カナダ、ブリティッシュコロンビア州のヴァーノン(Vernonはカナダ西部バンクーバーから400kmほどにある人口4万人の地方都市である)の新聞記事のリンクが貼られていた。

Google翻訳に少し手を入れた程度だがこんな感じ

コールドストリームのギター製作者の人生を讃える音楽の祭典

エドワード (テッド) トンプソンは、そのキャリアを通じて 1,000 本以上のギターを製作。5月4日に癌のため死去
(モーニングスタースタッフ記 2023年6月17日午前5時)

Coldstream の Ted Thompson は、そのキャリアの中で 1,000 本以上のギターを製作した。才能豊かな「純真な」弦楽器製作者は、5月4日に癌で亡くなった。多くの音楽を生み出した彼の生涯を讃える祝典が、7月2日午後5時から8時までコールドストリーム・コミュニティー・ホールで開催される。
地元では、コールドストリームに定住した穏やかな口調の控えめな弦楽器製作者エドワード(テッド)・アラン・トンプソンについてはほとんど知られていなかった。しかし、ドイツ、日本、カナダ、アメリカのギター愛好家、ミュージシャン、楽器店は彼の完璧な作品を賞賛し、購入していたのだ。
「トンプソンは田舎で詩人のような創造的な生活を送り、5月4日に癌で亡くなりました」と妻のハイディ・トンプソンは語った。「コミュニティは、素晴らしい才能をもった優しい職人を一人失いました。テッドは本当に特別な人でした。」
テッドへの音楽トリビュートが、7月2日日曜日の午後5時から8時までコールドストリーム・コミュニティ・ホールで予定されており、彼の人生の祝賀はギタリスト、職人、友人たちを喜ばせるだろう。トンプソンのエレキバイオリンを演奏するドゥニ・ルトゥルノーをはじめとしたミュージシャン、レント・フレイザー・ウォール、レス・コープランド、ケン・シュローダー、キャデラック・ボブ、パトリック・トンプソンなどのギタリストが演奏する。

部屋の収容人数に限りがあるため、一般の方のご参加はご招待制とさせていただきます。6 月 30 日までに電子メールで応募してください。

コモックスで生まれたテッドはバンクーバーで育った。1978年、5年間の機械工見習いを終えた後、スペインへ旅行した。滞在中、テッドはスペインの人里離れた山村の石造りの小屋で 6ヶ月間暮らした。熱も電気もなかったので、彼はバルセロナ音楽アカデミーに通うか、ろうそくの明かりでクラシックギターの演奏を学ぶかのどちらかで時間を過ごした。
テッドが小さな店で手工具だけを使って働くギター製作者に出会ったのはスペインだった。テッドは、これが自分の追求したい技術であることをすぐに理解した。カナダに戻った後、息子のガブリエル・ステビンズの近くにいるためにバーノンに定住した。彼はシルバー・スター・ミュージックの裏にある小さな店で働き、リュート、マンドリン、エレクトリック・バイオリン、スタンドアップ・エレクトリック・ベース、多数のエレクトリック・ギターやアコースティック・ギターなどの楽器を作り始めた。
工具製作者としての訓練を除いて、テッドはギターの作り方について人から学んだことはなかった。彼は単純に様々なギターを研究し、それを分解しその秘密を解明した。テッドは、彼の知識をさらに深めるために、難しい修理の仕事を歓迎した。
1983年、テッドはヨーロッパでの美術留学から帰国したばかりのハイジ・ワンダーリと結婚した。結婚直後、彼はリンパ腫と診断された。彼の治療は成功し、夫婦はコールドストリームに定住し、そこで彼は自分の作業場を建てました。それから40年間、テッドは息子、娘、孫たち、そしてミュージシャンの友人たちと楽しく過ごした。
1995年、150本以上のギターを製作した後、彼の小さなボディのT2モデルは、マーティン、ブリードラブ、ギブソン、ラリヴィー、テイラーなどの大手を含む北米ギターの国際審査に提出された。驚くべきことに、Thompson T2 は、サウンド、外観、構造、演奏性の点で Martin と同率で 1 位となった。トンプソンはその構造が完璧であると称賛された。
無心こそがテッドの手口だった。
彼は楽器が細部まで完璧になるまで決して休まなかった。当初ギターを組み立てるには50時間を要した。テッドはさまざまな手工具を使用し、インド、米国、南米、スペイン、カナダから購入したインドおよびブラジリアン ローズウッド、スプルース、カエデ、マホガニーなどの特殊な木材を組み込んだ。
その後、需要が増加したため、テッドは助けを求めた。彼の従業員の一人、トレバー・クロンバウアーは後にギター製作者になった。テッドは45年のキャリアの中で1,000本以上のギターを製作した。これらは故ジョン・アラン・キャメロン、カーラ・ルフトらによって演奏され、尊敬されてきた。

この記事の最後に登場しているJohn Allan Cameronという人、ちょっと気になったのでググってみると、カナダのフォークシンガーで、なんと異名が「ケルト音楽のゴッドファーザー」なんだそうだ。やっている曲がアイリッシュ寄りである。きっとトンプソンのギターでジグやリールを演奏したに違いない。

そしてもう一人、Cara Luft。1974年生まれのカナダのシンガーソングライターで、カナダのフォークトリオTheWailin'Jennysの創設メンバー。現在はソロで活動しているとのこと。この動画で弾いているのはまさにThompsonのギターだ。

今手元にあるこのT1。少し弾いただけだと地味な印象だが、じっくりと弾いてみると、音色に深みがあり、表情が豊かで、特に1弦のハイフレットを抑えて指で弾くと、一音だけで音楽になってしまうのではないか、と思わせるようなギターである。良く言う「ずっと弾いていたくなる」ギターというのはこういうのを言うのだろう。

画像
Thompson T1 1998
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