STRAIGHT TO HELL RETURNS あのパンキッシュ・スパゲッティ・ウェスタン・ムービーが帰ってきた!

STRAIGHT TO HELL RETURNS あのパンキッシュ・スパゲッティ・ウェスタン・ムービーが帰ってきた!

近所の商店街を歩いていたら、小さなレコードショップのウインドウに見覚えのあるチラシが貼ってあり、見ると「ストレイト・トゥ・ヘル・リターンズ」と書いてある。同じく近所のミニシアターで上映しているようだ。家に帰ってから調べると上映は明日までだ。急いで最終回を予約して観に行った。間に合ってよかった。客は僕を含めて2人だけだった。もう一人のお客さんは女性だったが、音楽のシーンでは体をゆすって盛り上がったりしていてそれも嬉しかった。この映画は30年以上前に一度観ている。しかし、今回は未公開シーンも追加されたリターンズであるし、そもそも半分以上憶えていなかったから非常に楽しく鑑賞できた。

それにしてもこんなに豪華な出演陣だったとは。
ジョー・ストラマーやポーグスの面々はわかっていたが、あの妊婦役はコートニー・ラブだったのか。それ以外にも、エルビス・コステロ、グレース・ジョーンズ、ジム・ジャームッシュ、デニス・ホッパーまで出ている。

チラシに書いてあったことだが、もともとこの映画は監督のアレックス・コックスが「シド・アンド・ナンシー」を撮影した後、音楽を担当したジョー・ストラマー(この元ピストルズメンバーの映画の音楽をジョー・ストラマーが担当していたとは!それも知らなかった・・・)と、ポーグス、エルビス・コステロなどとライヴツアーを企画し、それを撮影して映画にしようと目論んでいたのだが、予算が足りずに頓挫した際に、ジョー・ストラマーが「それじゃ、ウェスタン映画でも撮ろうぜ」と提案したのがきっかけなんだそうだ。

ある意味、長大なミュージッククリップのような映画と言っても良いのではないか。ストーリーは説明するのも馬鹿らしくなるくらいめちゃくちゃなのでやめておく。

ところで主役の一人、コートニー・ラブのことを調べると、この映画を撮った時はまだ無名だったようだ。

コートニー・ラブはサンフランシスコ生まれ、ポートランド育ちだそうだが、アイルランドのダブリンに実父(グレイトフル・デッドの出版者兼ロード・マネージャーだったという)が住んでいたため、17歳の時に一年間ダブリンに渡り、トリニティ・カレッジの神学の講義を受講したという。その時にダブリンであのジュリアン・コープと出会い、そのつてでリバプールにも渡り、18歳でアメリカに戻る。その後女優を目指していた彼女は「シド・アンド・ナンシー」のナンシー役のオーディションを受け、主役は落ちたが脇役に採用され、それが縁で今回の映画に主役に抜擢となったらしい。
また経歴を読むと、なんとこの映画の後、女優業に嫌気が差した彼女はシベリア行って漁師向けのストリッパーとして働いたのだという。なんという自由な人生だろう。その後、1989年頃、ロサンゼルスに移り「ホール」を結成。そしてカート・コバーンと出会うことになる。ということで、この映画に出ているコートニーはまだホールというバンドもやっていないし、カート・コバーンとも出会う前なのだ。

こちらは最近、2025年の映像、ボブ・ディランを歌っている。60歳を超えているのにこのかっこよさ。さすがだ。途中歌詞がわからなくなっても、この余裕のやり過ごし、見習いたい。

音楽はポーグスが担当していて、エンディングロールを見ると、ちゃんと各メンバーが曲を書き下ろしているようだ。ポーグスのメンバーは、シェイン・マクゴワンはもちろん、全員セリフもあり、ジョー・ストラマー含めた殺し屋4人組が紛れ込んだ町を仕切っているマクマホン一家の一員としてそれぞれ重要な役を演じている。当時ベーシストで、この映画の撮影当時もエルビス・コステロと交際していたケイト・オリオーダンなどは、クライマックスで「ダニーボーイ」を独唱している。(今回wikiを見て初めて知ったが、二人は正式には結婚しておらず、ただし、その関係は1986年から2002年まで16年間も続いたという。)

探すとそのシーンもちゃんとyoutubeにアップされている。

ダニーボーイも見どころだが、この映画で最も印象に残る歌といえばこの曲だ。終始みんなからいじめられるホットドッグ売りの歌。

この歌を歌うザンダー・シュロスは1961年生まれのアメリカのミュージシャン、俳優、作曲家でアレックス・コックス監督の映画に数多く出演している。『レポマン』(1983年)、『シド・アンド・ナンシー』(1986年)、『ストレイト・トゥ・ヘル』(1987年)、『ウォーカー』(1987年)、『エル・パトルレロ』 (1991年)、『ザ・ウィナー』(1996年)など、音楽面を含めて大きな貢献を果たしたという。

少し動画を検索してみたら、すっかりファンになってしまった。
こちらはその名も「Straight To Hell」、Clashの1982年の曲を2020年にザンダー・シュロスが歌っている。

こちらは彼の2021年に発表された曲のPVだ。このアコースティックな響き、最高だ。

そしてアレックス・コックスの映画をもっと見たくなった。
彼の作品リストを見ると、1987年の「Walker」であまりにも過激な政治的テーマに取り組んだために本人曰くブラックリストに入ってしまい、それ以降、低予算の独立系映画を撮り続けているという。

「シド・アンド・ナンシー」はプライムビデオでレンタル配信中のようだ。今度観てみよう。
一方で悪名たかき「Walker」の配信サービスは探したが見つからなかった。メルカリで探したらレンタル落ちのDVDがあったので思わず購入した。
それ以降の映画も探してみようと思う。

「Walker」の音楽はジョー・ストラマーが担当していて、当時そのサントラのビニール盤を買って今でも持っている。歌は少なくほとんどインストなのだが、なんとも素晴らしい名盤だと思う。ジョー・ストラマーという人の音楽的な視野の広さ、素養の高さ、音楽への愛情の深さが伝わってくる。

アレックス・コックスは1954年生まれとのことなので、今年で71歳である。2024年6月にはニコライ・ゴーゴリの小説『死せる魂』の映画化のためのクラウドファンディングを開始し、彼によればこれが最後の映画となるという。注目しておきたい。

ブログに戻る

コメントを残す